スクラムの拡張による組織づくり──複数のスクラムチームをScrum@Scaleで運用する
前回は第5章の内容をさらっと書きましたが、今回は同章の内容を深掘りして学んだことを書いていこうと思います。
その前に、目次を概観しておきます。
第1章 スクラムのスケーリングと大規模の難しさ
第2章 スクラムのおさらい
第3章 とあるチームのScrum@Scaleでの1スプリント
第4章 スクラムマスターサイクルとプロダクトオーナーサイクル
第5章 Scrum@Scaleを形成する12のコンポーネント
第6章 現場へどのように導入していくか
第7章 Scrum@Scaleで運用される現場
第5章 Scrum@Scaleを形成する12のコンポーネント
昨日書いた、12のコンポーネントについておさらいしておきます。
<共通>
- チームプロセス:2つのサイクルの交差点
- プロダクトリリースとフィードバック:プロダクトバックログの更新
- メトリクスと透明性:検査・適応のための手段
- 継続的改善と障害の除去:開発の障害を迅速に取り除く
- チーム横断の調整:コラボレーションの合理化
- デリバリ:完成したプロダクトを届ける
- EAT:Exective Action Team
<プロダクトオーナーサイクルのコンポーネント>
各コンポーネントの目指すゴールは何か、それぞれ見ていきたいと思います。
チームプロセス
目指すゴールは、開発者、スクラムマスター、プロダクトオーナーからなるスクラムチームが、スクラムのプロセスを正しく行えている状態です。
プロダクトリリースとフィードバック
目指すゴールは、プロダクトリリースにより得られた様々なフィードバックを解釈し、プロダクトの継続的改善を促している状態です。仮説の検証もこのコンポーネントの範疇になります。
メトリクスと透明性
目指すゴールは、プロダクトのリリースがうまくいっているか、安定稼働しているか等の情報(メトリクス)を継続的に収集し、メンバーの誰にでも見える状態です。
<ソフトウェア開発の現場で扱われるメトリクスの具体例>
- チームのパフォーマンス
- SLI(Service Level Indicators、サービスレベル指標)/SLO(Service Level Objectives、サービスレベル目標)
- SLI:システムの可用性に関するユーザー体験を対象とした定量的な測定値
- SLO:システムに対してどのくらいの可用性を期待するかの目標
- ビジネスを測る指標
継続的改善と障害の除去
目指すゴールは、仕事を進める上での障害物となるものを取り除けている状態です。
チーム横断の調整
目指すゴールは、関心事の近いチームどうしを結び付けて、密にコミュニケーションができるようになっている状態です。逆に、関心事が遠いチームとは、頻繁に同期しなくてもよい状態を維持する。
デリバリ
目指すゴールは、デリバリをスムーズに短いサイクルで実施するために、CI/CDの仕組みを構築し、開発したインクリメントがいつでもリリース可能な状態を保っていることです。
戦略的ビジョン
目指すゴールは、チームが有機的に動いてプロダクトの価値を作るために、全体の方向性を定めたビジョンが不可欠。
バックログの優先順位づけ
目指すゴールは、プロダクトバックログが「創発的である」という状態です。
バックログの分割とリファインメント
目指すゴールは、プロダクトバックログを階層ごとに整え、最終的にチームが作業に着手できる状態にまで落とし込む。
リリースプランニング
目指すゴールは、複数のチームに依存関係があり、各チームのインクリメントを統合してリリースするような場合、リリースまでの長期的な計画を作成している状態です。
まとめ
スクラムマスターサイクル、プロダクトオーナーサイクルの各コンポーネントの目指すゴールについてみてきました。
次回は第6章の内容について書いてみたいと思っています。