今日は組織変革における施策がちゃんと機能しているか、何かしらの指標を用いて測定する場合の注意点について、ある本で学んだことを書き残しておきたいと思います。
その本とは、こちら。
組織行動論の考え方・使い方〔第2版〕: 良質のエビデンスを手にするために
第5章の「組織行動の測定」の内容になります。
ここでは、自己回答型(いわゆる、質問を読んで回答するタイプのアンケート調査をイメージしてもらえばよいです)の調査に関する注意点がわかりやすく書かれています。
どうやって回答してるか
「このアンケートに回答してください」と言われたとき、どういうプロセスを辿って回答するかを考えると、次のようにフェーズわけできます。
1.質問を読む
2.内省する
3.質問に回答する
このうち、2と3、つまり、内省時と回答時にさまざまな誤差が発生することになります。
内省時に発生する誤差
- 自己評価の程度の違い
- いわゆる、自分に厳しいか、甘いかの違い。
- たとえば、「私は勤勉なほうだ」という項目について、仮に同じくらいの勤勉さを有していたとしても誤差が発生しうる。
- 誤差を減らす対策としては、自己評価での測定を避ける、もしくは自己評価と他者評価との加重平均をとる。
- 選択肢の反応の違い
- 「かなり~」「きわめて~」「どちらかといえば~」といった副詞のニュアンスの受け止め方の違い。
- 誤差を減らす対策としては、実際の調査に先立って、回答者がどのように理解し回答したのかをチェックしておく。
- 気分の違い
- 回答する時、気分が乗ってるか沈んでいるかの違い。
- 乗ってる時は肯定的に、沈んでいる時は否定的に解釈する傾向がある。(心理学では「気分一致効果」と呼ぶらしい)
- 誤差を減らす対策としては、完全にはコントロールできないまでも、年末や年度末の繁忙期を避ける、気分が大きく上下する可能性の高い時期・イベント(リストラ、人事異動、評価査定など)付近を避けるといった工夫は可能。
- 属している集団の違い
- 自分評価の際、身近な他者と比較してしまうので、同程度の業績を上げている人同士でも、きわめて高い成果を上げた人たちの集団にいる人と、大した成果を上げていない人ばかりの集団にいる人とでは、自己評価に大きな差が出る可能性がある。(「井の中の蛙効果」と呼ぶらしい)
- 純粋に業績のレベルを測定したい場合には、問題あり。
回答時に発生する誤差
- 肯定傾向という個人特性
- この個人特性が強いか弱いかの違い。
- この傾向が強い人は肯定的に回答をし、この傾向が弱い人は否定的な回答をする。
- 社会的望ましさ(社会的あたりまえ)
- 世間一般的に「これは望ましいこと」とされる自明の質問には、肯定的に回答するもの。逆の質問には、否定的に回答する傾向がある。なので、実際の回答が回答者本人の真の姿を反映していない可能性が高い。
内省時/回答時に共通する誤差
- 誤差が問題になるのは、個人差が存在する場合。
- 誤差がすべての回答者に一様に生じているのであれば、問題なし。
- 一部の職場・集団の回答のみ、歪みが発生している場合は、問題が深刻。
- 実際には存在しない相関関係が発生する(疑似相関と呼ぶ)
- 実際には存在する相関関係が消滅する(疑似無相関と呼ぶ)
まとめ
なんとなく感覚的にわかっていた誤差の話でしたが、分かりやすく、たとえも交えて説明されていたのがすごくよかったです。
他にもじっくり読んで思索を深められそうな章があるので、学んだことを忘れないよう書き残していこうと思います。