スクラムの拡張による組織づくり──複数のスクラムチームをScrum@Scaleで運用する
前回は第5章の内容を深掘りして学んだことを書きましたが、今回は第6章の内容について書いていこうと思います。
その前に、目次を概観しておきます。
第1章 スクラムのスケーリングと大規模の難しさ
第2章 スクラムのおさらい
第3章 とあるチームのScrum@Scaleでの1スプリント
第4章 スクラムマスターサイクルとプロダクトオーナーサイクル
第5章 Scrum@Scaleを形成する12のコンポーネント
第6章 現場へどのように導入していくか
第7章 Scrum@Scaleで運用される現場
第6章 現場へどのように導入していくか
この章ではScrum@Scaleを現場にどのように適用していけばよいかの順序の一例として、次の3つのステップを紹介しています。
Step1:SoSを立ち上げる
Step2:メタスクラムを立ち上げる
Step3:改善サイクルを回す
各Stepでいったいどういうことをするのか、ポイントになることを書いていきたいと思います。
Step1:SoSを立ち上げる
SoSとは、スクラムオブスクラム(Scrum of Scrum)の略です。
複数のスクラムチームが同じ目標に向かって活動するために、チームを同期させる必要があります。
その足場となるのが、SoSということになります。
SoSは関心事の近いチームどうしが集まって、情報を密にやりとりしていきます。
SoSのスクラムイベントしては
- デイリースクラム(朝会)
- レトロスペクティブ(ふりかえり)
を必須イベントとして行っていきます。
SoSとして何か具体的な成果物を作ることはありません。
SoSが立ち上がり、機能しはじめると、SoSだけではすばやく解決できない問題や障害物が増えてきます。
そうした時には、EAT(Exective Action Team)の出番です。
EATには、CTOやアジャイルコーチなどかなり強い権限を持った人が参加するのが望ましいです。
EATは、スクラムマスターサイクルの中核であり、「How」に関する迅速な意思決定を担います。
Step2:メタスクラムを立ち上げる
メタスクラムとは、プロダクトの共通のゴールやビジョンを共有し、一貫性を持って各チームのプロダクトバックログを作っていくプロダクトオーナーによるチームです。
メタスクラムの活動の中心者(チーフプロダクトオーナー)を決めて、メタスクラムのイベントを行っていきます。
メタスクラムのイベントとしては、
があります。
メタスクラムの活動を円滑に進めるために、高速に意思決定ができる人たちで構成されるEMS(Exective Meta Scrum)があります。
EMSには、CEO、CFO、マーケティング責任者、セールス責任者、事業責任者といった経営戦略に関する意思決定権を持った人が参加するのが望ましいです。
EMSは、プロダクトオーナーサイクルの中核であり、「What」に関する迅速な意思決定を担います。
Step3:改善サイクルを回す
本章の中では残念ながら、あまり具体的なことには言及されていません。
しいて言えば、前回書いたScrum@Scaleの12のコンポーネントについて、自分たちの組織がどの程度実践できているか自己採点し、結果が一番低いコンポーネントから順に取り組んでいけばよい、と突き放すような一言が書いてありました。
これはちょっとひどいなぁと感じました。
弱いところを強くするのは、そんなに簡単なものではないと思います。
なぜ弱いのか、その原因を探り、仮説を立て、実践してみて、検証する。
このサイクルを回していくことになるんだとは思いますが、強みを伸ばすのとは違い、弱みと向き合い続けるのはかなりしんどいものです。
このしんどい時をいかに乗り越えるか。
人・組織のレジリエンス力、ネガティブケイパビリティがどの程度あるのか、ここがまさに試されることになると思います。