組織開発に関する調べ物をする中で本書の存在を知り、手に取りました。
本を読むときは、「はじめに」「おわりに」「目次」と目を通して、読みたい章を開く、というのが定番コース。
この本についても同じように読み始めたわけだが、「はじめに」を読んで、いきなり惹きつけられました。
と言うのも、いきなり著者の体験してきた壮絶なエピソードが語られていたから。
父はバブル期に銀行にそそのかされて株取引を行うことになり、その結果、とても大きな負債を負いました。私が大学院生のときにガンで他界したのですが、残された家族で父のバブルの「敗戦処理」を行うという大変苦しい経験をしました。多大な借金を返済し続ける最中、明日があるのだろうかと思うようなお金の修羅場を経験し、なんとかその問題を乗り越えて、今、こうして大学で研究者として生きています。
自分が同じ状況に置かれていたとしたら。。
考えただけでもゾッとしました。
なぜ、このようなエピソードを書いたのか。
実は、「おわりに」でも個人的な体験が語られているのですが、その理由をこう綴っています。
あとがきにこのような個人的なことを書いたのは、苦労自慢をしたいわけではありません。形を変えて、みな、様々な生きる苦しみを抱えているのが人間で、たまたまわかりやすい形で私はそれを経験しただけだと思っています。
この後、自分自身の辛かった経験を通して、「対話」という言葉の意味を刷新したいと思い、本書を書いたと言っています。そして、「対話に助けられて、今生きているのだと気がついた」とまで書いてます。
どれだけ心の葛藤があったことか。
お父様への恨みもあっただろうし、自身に対するプレッシャーも相当のものがあったと思います。実際、「死」をも意識したとも綴られている文章もありました。
その著者が「あとがき」で読者に伝えたいことが3つある、として次の言葉を書き残しています。
ひとつは、焦らずに、着実に歩みを進めてほしいということ。
もうひとつは、逆境の中でもへこたれずに対話に挑み続けてほしいということ。
そして、苦しみの中にある人に手を差し伸べてほしいということ。
この文章を読んだだけでも、本書は経営学者の書いた組織論ではありますが、人生いかに生きてほしいか、著者の熱いメッセージが詰まった一冊だと感じさせるに十分ではないかと思います。
明日以降も読み進めて、読書メモとして書き残していければと考えています。