今日、家庭内で母子のちょっとした行き違いがあり、夕食前に空気が重たくなる場面がありました。
私はリモートワークでMTG中だったこともあり、細かい話のやりとりまでは聞けてない状態。
うーん、これは「推論のはしご」を使えば、コミュニケーションの食い違いを解消できるかも、と思い立って実践してみました。
推論のはしごとは、心理学者のクリス・アージリスが提唱した概念で、現実の世界を、選択的に観察し、解釈し、仮説を立て、結論を出す思考プロセスのことです。
人間は、この思考プロセスを数多く経験することで、「ああなったら、こうなる」という「メンタルモデル」を頭の中に作り、それに従って瞬時に判断する習慣を持っています。
このため、タイム・イズ・マネーという価値観が浸透している現代においては、多くの人が「推論のはしご」を一気に駆け上ってしまいがち。
時に、自分と相手の現実世界の解釈がズレて、出された結論から導かれた行動がお互いの関係をさらに悪い方向に進めてしまう、といったことが起こります。
まさに、夕食前の母と子はこの解釈のズレから微妙な関係に陥っていました。
私がやったのは、まず子どもに事実を確認するところから。
子どもは話をするのも億劫そうな顔をしていましたが、「怒らないから、どんなことがあって、その時どんな気持ちだったかを教えて」と伝えて、話を引き出していきました。
「なるほど、そういう風に思っていたんだね。わかったよ」
続いて、母親にも話を聞いていきました。
少し感情的なしこりが残っている感じで、事実をどう捉えて、どう解釈していたのか話を引き出すのにてこずりました。
こういうときは、ゆっくり、丁寧に話をすることが大切。
徐々に落ち着きを取り戻して、どう思っていたのかを話をしてくれました。
時系列に事実を確認し、そのときの思いを子ども、母親、双方の話を聞いた後、さらにゆっくりとはしごを登っていきます。
すると、母親が何気に放った言葉が子どもがすごく傷ついた事実が浮かび上がってきました。
この見えなかった事実を引き出せたことで、子どもの方も口に出せずにいた秘めた思いを明かしてくれました。
「お母さんのこの言葉がすごくイヤだったんだね。わかったよ」
その後もゆっくりとはしごを登りながら、双方の思いを口にし合う中で、母親がある事実に気づく場面がありました。
その瞬間、
「ごめん。お母さんがこういう風に言えば良かったんだね」
という言葉が飛び出しました。
この言葉に子どもも私もとてもビックリしました。
なぜなら、いつも自分から「ごめん」と口にすることが滅多にない母親が、まさかそんなことを言うなんて、ありえないと思ったからです。
これは本当に衝撃で、今回のような場面で「推論のはしご」をゆっくり登れるようになっておくと、心理的に安全な場づくりに活用できるなぁと実践してみて改めて思いました。
観察した事実から推測に飛躍せず、事実を冷静に確認すること。
これがとても大切ですね。
おかげさまで、重たい空気も一変して、家族で楽しい夕食時を過ごすことができてよかったです。